広告

BMW・DCTの現状と今後

BMW総合情報
BMファン君
BMファン君

BMWのDCT(ダブルクラッチトランスミッション)の搭載状況と今後の方向性を解説します。

広告

BMW・DCTの概要

欧州のVWではDSGと呼ぶダブルクラッチトランスミッション(DCT/Double-Clutch Transmission)搭載車が2003年頃から増え、BMWでも2009年のE90 M3に搭載後、一部の高性能スポーツ車種へ搭載されました。

大排気量車は、7速DCTから8ATへ

その後、E60/E90のDCT搭載車を最後として、トルコンの8ATへ再び戻す流れとなっています。
これは、トルコンAT車のデメリット(伝達効率、変速スピード)が改善され、スポーツ車向けとしても7速DCTよりも8ATの方が優ってしまったことにあります。

DCTの仕組み

手動変速機(マニュアルトランスミッション、MT)と同じ平行軸歯車とクラッチを2系統持つ。片方が奇数段を、もう片方が偶数段を担当し、それらを交互に繋ぎ変えながら変速します。
繋がれていない方は次の段を予測し待機状態します。
クラッチ操作および変速操作はコンピュータ制御により自動的に行われるため、操作は通常のATと同じです。

湿式と乾式

DCTは、物理的な機械式クラッチを用いるため、クラッチ接続時の摩擦熱が発生します。
BMW車は、基本的に湿式を採用しています。

  • 湿式:機械式または電動式ポンプにより、冷却用オイルを循環させクラッチ板に吹き付け、摩擦熱を冷却させる仕組みです。
  • 乾式:基本的にオイルで冷却せず、空冷式となり渋滞走行や大トルク車で問題が発生するため、一部車の採用に留まります。

メリット

  • MTに並みの高い伝達効率を実現。
  • 変速指令でクラッチだけを繋ぎ変えるので変速が早く、駆動力の途切れる時間が短くなることで、燃費が良く加速が良くなる。
  • AT免許扱い

デメリット

  • MTと比べてクラッチ、フライホイール、ねじりダンパ、変速機構が重複し、大きく重くなる。
  • MTとクラッチ操作に油圧を用いており、オイルポンプのエネルギーロスを伴う。
  • ATのトルクコンバーターに比べ、変速ショックが大きく感じる。
  • ATのトルクコンバーターのようなクリープが実現できない。
  • クラッチ摩耗時の寿命やコストが発生。
  • クラッチの構造が特許で押さえられているため基幹部品は一社独占であり、製造コストが割高。

BMW・DCTの状況

BMW M3、335i、Z4 sdrive35isではゲトラグ製の湿式7速DCTを採用しています。
(Getrag Powershift 7DCI600、トルク最大容量600Nm)
湿式は、オイルを循環供給することでクラッチの摩擦熱を放熱させる効果があります。
一方、オイル循環管理で若干のパワーロスとコストアップがデメリットです。

BMW・SMGとは

MTをDCTする前に、BMWではSMGを搭載していました。
乾式シングルクラッチトランスミッションで、クラッチの断続とシフトフォークの作動をMTのように人力ではなく電子制御の油圧で行います。
構造は通常のMTそのものです。通常のMT操作を油圧制御しているだけのため、変速機構に負担がかかりやすい構造でした。
変速スピードは0.08秒となり、人が操作するよりも早くチェンジできる分、シフトショックやギヤへの負担が大きかったようです。

  • ゲトラグ社製SMG(シーケンシャルMギヤーボックス)
  • E46 M3 S54B32O0エンジン SMG2(GS6S420BG)
  • E60 M5 S85B50O0エンジン SMG3(GS7S47BG)
  • E63 M6 S85B50O0エンジン SMG3(GS7S47BG)

BMW・DCT搭載車は減少傾向(2020年代)

BMWのDCT(ダブルクラッチトランスミッション)は、減少傾向となっていました。
現在では、M2,M3,M4のみDCT搭載車となっています。
先代E90-335iなどでは、トップグレードのハイパワーモデルには、DCT搭載車が設定されていましたが、その搭載車も最新モデルでは8ATが採用されています。

最新のM5(G30/F90)は600馬力の4WDとなり、その大パワーをDCTでは受け止められないため、ZF製の8速ATが採用されたとされています。

ハイパワーモデルはMモデルですらDCT廃止の傾向

生産台数の少なさから、BMWに搭載しているDCTはATに比べてコストが高いのではないかと推測されます。
これは、VWのように不評ながらも一般モデルに採用しているメーカーとは情勢が異なります。

最新のM5ですら、8ATを採用したところを見ると、スポーツ性能がDCTと同等レベルに追い付いたことを意味しています。
ツインクラッチのDCTの方がスポーティであるというMモデルとしての特権は無くなったと言えます。当然、6MTよりも8ATの方が加速性能が良いことは言うまでもありません。

欧州でもDCTやDSGが捨てられる運命

ハイパワーMモデルのM5が8ATを採用したり、Audi RS5もテイップトロニックが採用されています。いわば、欧州でも本家もDCT離れの流れとなっています。

一方でポルシェのパナメーラは8速Sトロニック(DCT)を採用し、500psオーバーに耐えうるDCT(DSG)となっています。
ただし、アッパーミドルの車では採用が少なくなっています。
やはり、高級車に相応しいスムーズさがDCTでは得られないからでしょう。
パナメーラのユーザーがダイレクトなシフトフィールを望んでいるかと言えば微妙ですが。

DCTが嫌われる理由

日本では、ATやCVTが普及しており、欧州のようなMT車を好まない傾向にあるようです。
あくまでも発進も変速もスムーズさを追求し、燃費も向上したCVTの普及率が日本車で高いことも、それを物語っていることでしょう。
DCTは、ATのような変速フィールを持たせていますが実際には、かなりのギクシャク感を伴います。
それは、北米でも同様でありメルセデスやBMWが一般車両にDCT(DSG)搭載車を増やさない理由でもあります。

日本製なので信頼性が高いと思っていましたが「アイシン 6AT トラブル」などのキーワードで検索するとかなりのトラブル事例が出てきます。
6ATに見切りを付けた理由としては、ZF製に代替6ATが無い。8ATは大きすぎる点とFFモデル未対応な点で搭載出来ないなどの理由が考えられます。

今後のBMW・DCTの流れ

大排気量・高性能モデルはZF製8AT

BMW 3シリーズE46 M3ではSMG2を採用し、E90 M3では、7速DCTにレベルアップしました。2020年登場のG80 M3は「Drivelogic」を搭載した8速AT「Mステップトロニック」を搭載しました。
大排気量モデルは従来通り、8ATでスポーツモデル・Mモデルも8ATを搭載する流れです。
2105年7月にカナダに本拠を置く自動車部品大手、マグナインターナショナルは、トランスミッション製造のドイツのゲトラグを買収することで合意した、と発表しました。ゲトラグは、トランスミッション分野で80年の歴史を持つ老舗企業。トランスミッション業界をリードする企業でもありますが、ZF製ATに置き換える流れのようです。

3気筒エンジンはDCT搭載の流れ

2017年にBMW F48 X1のsDrive18iは、1.5Lターボの3気筒エンジンとなり、7速DCTが搭載されました。

従来、日本のアイシンAW製の6速ATが搭載されていましたが、マグナ製(旧ゲトラグ社を引き継いだゲトラグのブランド名)DCTに置き換えられました。
第3世代のDCT「ゲトラグ7DCT300」は、より良い燃料消費量とよりダイナミックなシフトを提供しながら、第2世代DCTよりも軽くなっています。300Nmの最大トルクを許容しています。
また、マグナのデュアルクラッチトランスミッションは、トランスミッションハウジング内にコンパクトな電気モーターを含めることを可能にし、トランスミッションの設置長に影響を与えない仕様のようです。
48Vマイルドハイブリッドからプラグインハイブリッドまで、さまざまな用途に合わせて電動化の発展性も期待できます。
今後の対象としてはBMW製3気筒エンジンモデルがDCT搭載対象となります。
小排気量モデルは懸念される大トルクによるクラッチトラブルも少なく、燃費にも貢献できそうです。
トルクコンバータに劣るショックは、キビキビ走れるトランスミッションという性格で割り切る事もできるでしょう。

1/2シリーズ、X1/X2シリーズはDCT搭載化

2017年以降の新型モデルについては、3気筒の4気筒モデルが全て「DCT搭載車」の流れになっています。これは、エントリーモデルとして、DCTに統一する流れが見て取れます。
日本国内の用途しては、高速移動が主体ではなく、むしろ渋滞や低速走行、駐車場の車庫入れなどを多用します。
トルクコンバーターのクリープを利用した操作やショックの少ないシフトフィールが好まれる傾向です。BMWのエントリーモデルといえども、トルクコンバーター採用車が少なくなってしまったのは非常に残念な傾向と言えます。

BMWのDCTまとめ

最新の状況とモデルの選び方をまとめました。2018年以降は、以下の流れになります。

  • 過去、DCTを搭載していたMモデルは、トルコンATの高性能化により、8速トルコンAT化
  • 3/X3以上は、従来通り8速トルコンATを採用
  • 2/X2以下は、コンパクトな変速機や機敏さを重視した7速DCTを採用

3、X3シリーズ以上の上位モデルはトルクコンバーターAT採用

BMWのラインナップとして、型式名Gモデル(2018年)以降の大排気量、ハイパワーモデルからDCTを無くし、8ATに統一する方向です。
メルセデスでは9速AT搭載車種も増えていますが、BMWでは多段化数を8速ATに留めています。
実際、変速ショックや実加速性能では遜色有りません。
多段化による燃費や加速性能のメリットに対して、コストや重量増、AT本体の体積増などのデメリットの兼ね合いを考慮した結果とされています。
今後の電動化を見据えると、9速以上の多段化を実施することは無いと予想します。

2、X2シリーズ以下のエントリーモデルはDCT採用

1/2シリーズ、X1/X2シリーズなどのエントリーモデル相当のグレードとしては、小型軽量化とコストダウンが重視され、DCTが搭載されます。
以前のトルコンフィールを求める方は、上位モデルを選ぶという手法になりました。
日本特有の高温多湿な環境に加えて、渋滞路が多く湿式クラッチを用いたDCTには過酷な状況ではありますが、BMWに搭載されたDCTの不具合報告は聞かれません。2010年代にVW・アウディ・ポルシェ向けのシェフラー製DCTと異なる改善が見られるようです。

メルセデスA/BクラスもDCTを採用しており、価格やパワーバランスからの設定なのでしょう。実際にして違和感が無ければ、BMW製DCTも買いでしょう。

BMW総合情報
広告
BMWファン