ディーラーのボディーコーティングは本当に必要か?洗車頻度と駐車環境から見た最適解

メンテナンス
BMファン君
BMファン君

新車購入時に必ず提示される「ディーラーのボディーコーティング」。
高額である一方、「やったほうがいい」「いや無駄だ」という声も多く、判断に迷う人は少なくありません。
本記事では、これまでの論点を整理しつつ、実際のユーザー行動、洗車頻度、駐車環境という現実的な視点から、コーティングの本当の価値を掘り下げていきます。

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ディーラーコーティングの実態|説明と現場は一致しているのか

ディーラーで説明されるコーティング内容は、多くの場合とても立派です。
ガラス系、数年耐久、専用設備、専門スタッフ…。しかし、実際に車に触れるユーザーが確認できるのは仕上がりだけで、施工プロセスはほぼ見えません。

現場レベルでは、以下のような差が存在します。

施工実態 内容
良心的な例 外注専門業者による下地処理・研磨・定着施工
平均的な例 簡易研磨+塗布、短時間施工
問題になりやすい例 実質的にスプレー式簡易コートを塗るだけ

説明を丁寧に聞いたからといって、必ずしも高品質な施工が行われているとは限りません。
特に納車台数が多いディーラーでは、作業は流れ作業になりがちです。

BMWのディーラーコーティングは特別なのか

BMWに限らず輸入車ディーラーのコーティングは、「メーカー純正」という言葉から特別感を抱かれがちです。
しかし実際には、施工自体は日本国内向けに用意されたメニューであり、BMW本社が直接関与しているわけではありません。

BMWの塗装は比較的硬質で、国産車よりもコーティング依存度は低めです。
つまり、BMWだからコーティングが必須ということも、逆に特別に強いということもありません。
仕上がりを左右するのは、結局のところ施工品質とその後の洗車運用です。

自動洗車でコーティングは落ちるのか

「自動洗車を使ったらコーティングが全部落ちる」という話をよく耳にしますが、これは半分正解で半分誤解です。

正確には、落ちるのは撥水性能の体感であって、必ずしも皮膜そのものが消えているわけではありません。

症状 実際に起きていること
撥水しなくなった 表面が汚れで覆われている
艶が鈍い 微細な洗車傷+皮膜汚染
完全に効果なし 施工が薄い、または簡易施工だった

特にディーラー量産型コーティングや簡易ガラス系は、数十回のブラシ洗車で体感効果が薄れていくケースが多いのが現実です。

エッジングとは何か|コーティング最大の誤解

エッジングとは、鳥フン、樹液、水道水のミネラルなどが塗装面と化学反応を起こし、塗装に食い込む現象です。

重要なのは、コーティングをしていてもエッジングは起きるという点です。
特に屋根なし駐車で一週間放置すれば、十分に危険ラインに入ります。

駐車環境別ダメージマトリクス

駐車環境 紫外線 汚染物 化学ダメージ 総合
海の近く 6 9 9 9
山間部 5 7 6 7
都市部 4 8 7 7
交通量多 3 9 6 7
屋根なし 8 6 7 8
カーポート 5 5 5 5
畑の近く 3 8 4 6
地下駐車場 1 3 2 2

洗車頻度とコーティング効果の関係

屋根なし駐車、ウォータースポットを一週間放置した場合、洗車頻度による差ははっきり出ます。

洗車頻度 実態
週1回 エッジング発生をほぼ防げる
月1回 エッジング発生率が高まる
3か月に1回 コーティング有無に関係なく劣化

DIY・スタンド・専門店・ディーラー別の理想運用

パターン 洗車頻度 コーティング運用
DIY(理想) 2週に1回 簡易スプレー随時
DIY(最低限) 月1回 毎回簡易施工
スタンド洗車 2週に1回 3〜6か月に簡易
専門店施工 月1回 年1メンテナンス
ディーラー任せ 月1回以上 半年ごとの点検必須

DIY洗車の実像|正解ルートとは

実際のDIY洗車は、多くの場合以下の流れです。

  1. 水洗いで砂を落とす
  2. シャンプー洗車
  3. 十分なすすぎ
  4. 拭き取り
  5. 撥水低下を感じたら簡易コーティングやワックス

これは合理的で、むしろ理想的な運用です。
撥水が維持されていれば洗車のみで十分という考え方も現実に即しています。

駐車環境と洗車頻度から見た最適なコーティング選び

コーティング選びで迷ったら、以下の三点だけを考えれば十分です。

  • どれくらいの頻度で洗車できるか
  • 駐車環境は過酷か
  • 手を動かすことを苦に感じるか
ユーザー像 最適解
2週に1回洗車できる DIY+簡易コーティング
洗車が苦手 専門店の厚膜系
屋根なしで過酷 厚膜系+高頻度洗車
ディーラー任せ 過信せず洗車重視

BMWのイノベクションコーティングとは何か

BMWのイノベクション、イノベクションプラスのコーティングは、いわゆる「ディーラー提供型コーティング」に分類されます。
BMW独自技術のように見えますが、実態としては日本市場向けに用意されたディーラーオプションであり、施工自体は外部業者や下請けが担当するケースが大半です。

項目 BMW
イノベクション・プラス
社外コーティング専門店の例
コーティング剤成分 イノベクション:ポリマー系

プラス:無機化合物と有機物を融合したもので、より保護膜が強固

セラミックコーティング
ガラスコーティング
コーティング厚み 4〜6ミクロン 2〜20ミクロン
傷への強さ 柔らかく傷がつきやすい
プラスは耐性向上
表面硬度は7〜9Hで硬く、傷に強い
熱や汚れへの強さ 特に明記なし
有機質のため熱に弱く、
紫外線や油分といった汚れにも弱い
熱・紫外線に強く、油分といった汚れに強い
効果持続期間 〜2年 1〜5年が多い
メンテナンス性 ポリマーは酸に弱いとされるが、定期的な洗車次第。定期メンテナンスは必須 ディーラーコーティングより皮膜は強い。それが専門店の存在価値でもある。ただし、定期メンテナンスは必須。過信は禁物
価格 9万〜12万 7万〜40万

イノベクションは「悪いコーティング」ではありませんが、施工時間と膜厚には限界があり、過信すると期待とのギャップが生じやすいのが現実です。

ガラス・セラミック・市販コーティングとの違い

コーティングの種類は多岐にわたりますが、実用上は次の4分類で考えると分かりやすくなります。

種類 特徴 向いている人
ディーラー(イノベクション等) 均質・無難・短時間施工 手間をかけたくない人
専門店ガラス 下地処理重視・定着力高 仕上がり重視
セラミック 膜厚が厚く耐薬品性高 屋外・過酷環境
市販簡易品 施工容易・更新前提 DIY洗車派

セラミックコーティングは確かに耐久性が高い一方、エッジングを完全に防ぐものではありません。また、膜が硬い分、ダメージが入ると修正が難しいという側面もあります。

市販品は耐久性こそ短いものの、洗車頻度が高い人にとっては最も合理的な選択になることも多いです。特に最近の市販品は、著しく性能が向上しており、撥水効果が数か月持続するものもあり、コスパは最強です。

ウォータースポットとは何か

ウォータースポットとは、水滴が乾燥することでミネラル分が塗装表面に残り、白い輪染みとして見える現象です。

多くの場合、以下が原因になります。

  • 水道水に含まれるカルシウム・マグネシウム
  • 洗車後の拭き取り不足
  • 炎天下での放置

ウォータースポットは初期段階であれば洗車やケミカルで除去可能です。
見た目の問題であり、必ずしも塗装そのものが傷んでいるとは限りません。

エッジングとは何か|本当に怖いダメージ

エッジングはウォータースポットと混同されがちですが、性質はまったく異なります。

エッジングとは、鳥フン、樹液、水滴中のミネラルが塗装と化学反応を起こし、塗装面を侵食する現象です。

比較項目 ウォータースポット エッジング
原因 乾燥したミネラル残留 化学反応による侵食
除去難度 低~中 高(研磨が必要)
放置リスク 見た目悪化 塗装ダメージ確定

重要なのは、どんな高級コーティングをしていてもエッジングは起きるという点です。
コーティングは反応を遅らせるだけで、完全防御ではありません。

BMWイノベクションはエッジングを防げるのか

結論から言えば、防げません。
これはイノベクションに限らず、すべてのコーティングに共通します。

イノベクションは薄膜である分、ウォータースポットの初期段階では比較的リカバリーしやすい反面、長期放置によるエッジングには弱い傾向があります。

屋根なし駐車で一週間放置すれば、エッジングが発生しても不思議ではありません。

結局どれを選ぶべきか|再整理

条件 現実的な選択
BMW・屋内保管・洗車多 市販簡易 or イノベクション
BMW・屋外保管・洗車少 専門店ガラス or セラミック
DIY好き 市販簡易を頻繁更新
完全放置前提 どれを選んでも限界あり

まとめ|コーティングは万能ではなく、道具にすぎない

BMW純正コーティング、専門店のコーティングは、安心感と無難さを提供する選択肢です。
しかし、それが特別に強いわけでも、エッジングを防ぐ魔法でもありません。

コーティングの性能差よりも、洗車頻度と放置時間の差のほうが、塗装寿命に与える影響は圧倒的に大きいのが実情です。

どのコーティングを選ぶにせよ、「洗える前提」で考える。
この視点を持てば、選択で大きく外すことはなくなります。