
塩害は、事故や故障と異なり、着実に愛車を蝕んでいきます。特に影響が大きいのが、冬季の融雪剤と海沿い環境の潮風。この2つは性質こそ違えど、結果として車の下回り・隙間・見えない部分に深刻なダメージを残します。ここでは、これまで整理してきた内容を土台に、BMW特有の弱点、対策頻度の適正ライン、よくある疑問まで含めて、実用目線でまとめます。
塩害対策の基本構造|3つの前提
① 冬季:走った後に「落とす」
雪道で散布される融雪剤は、短期間で高濃度です。
タイヤが巻き上げた塩水は、フロア下やサスペンション周辺に集中します。
ここで厄介なのは、走行後に乾いて見えても、塩分そのものは残る点です。
乾燥=安全ではありません。
② 海沿い:溜めないように「落とす」
潮風に含まれる塩分は、雨や霧と一緒に車体の隙間へ入り込みます。
目立つ汚れがなくても、確実に蓄積されていきます。
冬季が「集中攻撃」なら、海沿いは「静かな消耗戦」。
放置すると、数年後にまとめて表面化します。
③ 共通:下回りと隙間を意識する
塩害で最もダメージを受けるのは、オーナーの視界に入りにくい場所です。
- フロア下面
- サイドシル内部
- ドア下部の水抜き穴
- 給油口やハッチ裏
ここが腐食すると、修理費は一気に跳ね上がり、下取り査定にも直結します。
BMWの弱点|塩害との相性が悪い理由
BMWは、防錆品質が低いメーカーではありません。
ただし、日本の使用環境では弱点が顕在化しやすい設計思想を持っています。
アルミとスチールの混在構造
BMWは軽量化のため、アルミ部品を多用します。
問題は、異種金属が接触する部分で電食が起きやすい点です。
塩分+水分が加わると、腐食の進行は一気に早まります。
下回りの樹脂カバー構造
空力と静粛性を重視した結果、下回りは樹脂カバーで覆われています。
これは走行性能には有利ですが、内部に入り込んだ塩分が抜けにくいという側面もあります。
ボルト・ブラケット類の腐食
BMWは走行性能を優先するため、足回りの金属部品が露出しやすい構成です。
サスペンションボルトやマフラーフランジが、数年で著しく錆びる例も珍しくありません。
結果として、「見た目はきれいなのに、整備時に追加費用が発生する」という状況が起きやすくなります。
「やりすぎ」と「やらなさすぎ」の境界
やらなさすぎの典型例
- 冬に一度も下回り洗浄をしない
- 見た目が汚れていなければ洗車しない
- 防錆は新車時だけで十分だと思っている
この状態では、塩害は確実に進行します。
気づいた時には、止めることしかできません。
やりすぎの典型例
- 毎回の洗車で過度な高圧洗浄
- 頻繁な強力ケミカル使用
- 短期間での過剰な再コーティング
過度な洗浄は、防錆被膜やシール材を傷めます。
結果として、逆に腐食の入口を増やすこともあります。
適正ラインの考え方
完璧を目指す必要はありません。
塩が付着した状態を、長期間放置しない。
これだけで結果は大きく変わります。
よくある質問(FAQ)
Q. 洗車機の下部洗浄でも意味はありますか?
十分にあります。
塩分を希釈して流すだけでも、腐食スピードは大きく下がります。
Q. 高価なガラスコーティングは必須ですか?
必須ではありません。
安価なワックスでも、定期的に被膜を維持する方が効果的な場合もあります。
Q. BMWは日本で長く乗るのに向かない?
適切な塩害対策を行えば、全く問題ありません。
弱点を理解せずに放置することが、結果として高コストにつながります。
Q. 防錆施工は中古車でも意味がありますか?
錆が進行し切る前であれば十分意味があります。
状態確認のうえで施工可否を判断するのが現実的です。
まとめ|塩害対策は「習慣」と「加減」で決まる
塩害は、車の性能やブランドを問わず起こります。
違いが出るのは、オーナーと愛車向き合い方です。
- 冬季は走行後に落とす
- 海沿いでは定期的に落とす
- 下回りと隙間を意識する
そして、やらなさすぎず、やりすぎない。
このバランスこそが、車を長く、健全に保つ最大のコツです。
塩害対策は、見えない部分への気遣いです。
それは同時に、将来の修理費、そして手放すときの価値を守る行為でもあります。

