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BMWにおけるFCEVは救世主なのか?水素戦略の現実と限界を総点検

BMW総合情報
BMファン君
BMファン君

FCEV(燃料電池車)は長年「究極のゼロエミッション車」として語られてきた。しかし現実には、日本・米国・中国という主要市場すべてで乗用車としての商業的成功を収めていない。
本稿では、BMWの過去・現在・将来判断を軸に、FCEV戦略の実態を整理し、2028年判断延期の意味、トヨタの立場、水素技術の行き先までを包括的に検証する。

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BMWは過去に水素エンジン車で「完全撤退」を経験している

BMWはFCEV以前に、水素を「燃料」とする内燃機関車に取り組んだ数少ないメーカーである。
2000年代のHydrogen 7をはじめとする水素エンジン開発は、技術的には成立していた。
しかし、市場性・インフラ・コストのすべてが成立せず、BMWは明確に撤退を決断した。

重要なのは、この撤退が「技術未成熟」ではなく、市場不成立を理由とする完全な事業撤退であった点である。
BMWはすでに「水素×乗用車」の失敗を一度経験している。

BMWは本当にFCEVに将来性があると考えているのか

結論から言えば、BMWがFCEVを将来の主力技術と考えている形跡はない。
FCEVはあくまで「技術的オプション」「規制・政策対応カード」の位置付けにとどまる。

BMW自身が一貫して示してきたのは、BEV・PHEV・ICEの多軸戦略であり、FCEVは常に周縁的存在だった。

BMWのFCEV試験は2023年以前から実施されている

BMWのFCEV開発は2023年に始まったものではない。
トヨタとの技術協業は2010年代半ばから続いており、
スタック・高圧水素タンクはトヨタ由来技術を流用してきた。

つまり、2023年のBMW X5 FCEVは「初期試作」ではなく、長年の検証を経た完成形に近い試験車である。

4. BMW X5 FCEVは2023年時点で完成していた

BMW X5 FCEVは、走行性能・パッケージング・信頼性の面で、
すでに市販可能水準に到達していた。
それにもかかわらず、以降のモーターショーでは同一仕様が繰り返し展示され、
後継開発が進んでいる兆候は見られない。

これは技術的停滞ではなく、「次に進まない」という経営判断を示唆している。

なぜ市販化が2028年なのか? 遅すぎる判断延期の正体

トヨタはすでにFCEVを市販している。
スタック・タンクを共有し、試験車まで完成しているBMWが、2028年まで市販判断を延期する合理的理由は存在しない。

2028年とは、

  • 現経営陣の任期外
  • EU規制の再整理後
  • 水素政策の成果・失敗が明確になる時期

であり、技術ではなく責任回避のための期限と見るのが合理的である。

EUはBEV一本足ではない。FCEVが必要な理由はあるのか

EUでは2035年エンジン車禁止方針が事実上修正され、PHEVやe-fuelの余地が残された。
このため「BEV一本足リスク回避のためのFCEV」という論理は成立しない。

PHEVが存続するなら、BMWにとってFCEVは戦略上の必須要素ではない。

FCEVは「今後悪化するか未確定」ではなく、すでに最悪である

FCEVは、日本・米国(カリフォルニア)という最も有利な条件下で失敗している。

  • 日本:官民主導・補助金最大化でも需要不在
  • 米国:水素価格高騰、ステーション閉鎖、販売縮小
  • 中国:乗用車FCEVを事実上放棄

「さらに悪化するか未確定」という表現は、事実ではなく政治的・企業的配慮にすぎない。

税金漬けのFCEVは乗用車以外でも成功しないのか

水素は商用車・産業用途で語られることが多い。
しかし、ここでも同じ構造的問題が存在する。

  • インフラは常に税金依存
  • BEV・電化鉄道・合成燃料との競合
  • 水素供給コストは根本的に高い

結論として、「乗用車以外なら成功する」という判断も過度に楽観的であり、
トラックやバス用途でも成立する可能性は著しく低いと判断するのが妥当でしょう。

よって、BMWがこの領域に踏み込む経営判断を実施しない可能性が高いでしょう。

BMW離脱後、トヨタは完全に孤立するのか

BMWはトヨタFCEV戦略における「欧州正当化装置」だった。
BMWが事実上の撤退を選べば、
トヨタは先進国乗用車市場で単独旗を掲げることになる。

これは技術的孤立ではなく、市場的・政治的孤立を意味する。

官民連携が弱まった場合、トヨタのFCEVは「国家プロジェクト専用技術」へと縮退する可能性が高い。

BMWは2028年にFCEV計画を撤回する可能性が高い

現状を総合すると、
BMWが2028年にFCEVを本格市販する可能性は極めて低い。

想定される結末は、

  • 「市場が成熟していない」という理由で延期
  • 「商用用途への転用検討」へのすり替え
  • 実質的撤退を“戦略的見直し”と表現

これは失敗ではなく、「失敗と言わずに終わらせる」ための時間稼ぎである。

 結論:FCEVは救世主ではなく、終わり方を模索する技術である

FCEVは、

  • 技術的には成立している
  • 市場的には成立していない
  • 財政的には永続不能

という、極めて明確な結論に到達している。

BMWの判断は冷静であり、2028年とは「最後の幕引き期限」にほかならない。

水素が完全に消えるわけではない。
しかし少なくとも、乗用車の主役になる未来は、すでに否定された。というまとめになります。