都心部の豪雪シーンでは、よくBMWが登場します。意図的にニュースに使われるケースが多いようですが、本当に雪に弱いのでしょうか。その実態とBMWオーナー向けの雪対策を紹介します。
FRは、雪道に弱いのか?
50:50の重量配分がイメージのBMWです。例えば、車重1800キロの場合は、前後900キロづつとなります。FF車の場合は、60:40とフロントが重くなりますので、前1080キロ:後720キロとなり、前後重量差は、360キロにもなるのです。後輪駆動でありながら、後ろへの重量配分が多いことを示しており、フロントヘビーなFF車に比べて雪に強いとも言えます。
最近の電子制御は雪にも強い
横滑り防止装置なども標準装備され、電子デバイスによるスリップ制御もあり、雪道の許容力も向上しています。(スタッドレス装着車)
しかし、4WDの四輪駆動車に比べ、後輪駆動のみとなりますので、急坂などでは厳しいケースもあるでしょう。降雪地域の方で、特に急坂が多い場合、BMWのxDriveモデルの購入を推奨します。
雪道でスタックしたBMWの映像
突発的な降雪でノーマルタイヤを履いたBMWのFR車が前に進まないTV映像を見たことは無いでしょうか?。なぜ、このようになるのでしょうか?
ダイナミック・スタビリティ・コントロール(DSC)
前に進まない原因はDSCによるものです。
DSCの機能は「スリップやスライドなどの兆候を察知すると、車両の挙動が乱れる前に必要に応じてエンジン出力や各車輪毎のブレーキに即座に介入。最適なトラクションと走行安定性を確保します。路面状況にかかわらずBMWならではのダイナミックな走りや優れたハンドリングを、より安全に愉しむことができます。」となります。
降雪時など、後輪の両方がスリップする状況では、両輪のそれぞれが、路面に駆動力を伝える動きが抑制されます。結果、前に進まない状況が発生するのです。
ダイナミック・トラクション・コントロール(DTC)
DTCの機能は「DTCは、ボタンひとつで作動し、スリップ量を一定限度まで許容し、駆動力を最大限に保持します。滑りやすい路面状況でもスムーズな発進や加速を可能にすることで、極めてスポーティなドライビングを可能にします。」です。
スリップを許容しつつ、駆動力を路面に伝えます。雪道ではDTCのみの状態が有効です。
DSCをOFFに設定し、駆動力を路面に伝える
雪道ではDTCのみの状態が有効ですから、DSCのボタンを長押しし、DSC設定をOFFとし、DTC設定ONのみが有効です。
雪への備え10のポイント
タイヤ寿命の点検と交換
ノーマル、スタッドレスに関わらず、タイヤ寿命・溝の深さはタイヤ性能の発揮に重要な要素です。タイヤ寿命や溝が無い場合は、早期の交換しましょう。
オールシーズンタイヤという選択
年数回の雪対策なら十分な性能を発揮します。
チェーンの携行と脱着の練習
突発的な豪雪やアイスバーンでは、スタッドレスでもスタックする可能性があります。金属チェーン、ゴムチェーン、布製チェーンを携行することが必須です。
事前にチェーン損傷を確認し、チェーン脱着の練習を行い、助けが無くても自力で装着できる訓練が必要です。
- 作業用手袋:チェーンを取り付け作業時に携行
- 懐中電灯:夜間作業用に携行
BMWに合うタイヤチェーンとは
金属チェーンやゴムチェーンは装着不可の車種もあります。これはタイヤハウス内に余裕がなく、損傷の可能性が高いためです。
しかし、金属チェーン不可の車種でも「スノーソックス」という布チェーンは装着可能です。BMW純正用品としてもラインナップされていますので、万が一の雪対策のため、車に常備しておく事をお勧めします。車に常備してもジャマにならないコンパクトさです。金額も約2万円程度とお手頃価格です。
スキーキャリアやルーフボックスの点検整備
走行中に外れてしまうと思わぬ事故に繋がります。スキーキャリアやルーフボックスの点検整備とスキーやボードを装着後の確認は欠かせません。
エンジン冷却液の点検
エンジン冷却液(クーラント)の水が不足していたり、不凍液の配分が適正でないと、水が凍結してパイプが損傷する可能性があります。エンジン冷却液の量と不凍液の配分チェックが必要です。
ワイパーやウォッシャー液の点検交換
快適な走行に繋げるためには、ワイパー性能の確認が必要です。
ゴムが劣化していれば、新品に交換しましょう。ウインドー・ウォッシャー液の補充や噴射の確認も必要です。
ウィンドウの汚れや曇り・結露対策
市販のグッツを利用して、ガラスのクリーニングと内側からの曇り止め対策が有効です。曇りや結露が発生したら、早めのエアコン除湿などの空調管理も有効です。
ウェザー・ストリップの点検交換
新車から数年が経過するとドアや窓枠のゴムが劣化し、最悪、雨漏りや錆の発生に繋がります。水はけが悪いと少量でも曇りの原因になります。ウェザー・ストリップも定期的な点検交換が必要です。
バッテリーの点検交換
最近の車は電装系装備が多く、厳寒の時期は弱ったバッテリーにとって性能の低下が顕著に表れます。お出かけ前の点検と弱ったバッテリーは早期交換が必須です。
ヘッドライトの点検
夜間や降雪時の視界確保のため、ヘッドライトやフォグランプの点検と光軸の確認は必須です。
雪対策のグッツ(常時携帯)
- 解氷スプレー:ガラスの氷を溶かします。
- アイススクレーパー:ガラスの氷を削り落とします。
- 洗車用品:雪をブラシで払ったり、窓を拭くなど、多目的に使えます。
このような、雪払いの対応が面倒であれば、フロントガラスカバーやボディカバーを使うことも効果的です。
雪対策のグッツ(豪雪・遠距離走行時)
- ブランケット:渋滞や休憩時の保温用
- けん引用ロープ:雪の中で動けなくなった自車または他車を引き出すために。
- スコップや脱出シート:スタック時の雪かき用
- 携帯用ガソリンタンク:燃料切れ対策
- ブースター・ケーブル:バッテリー上がり時の対策用
BMWのFRは雪にも強いのか?
BMWは、FR車がメインですが、前後タイヤの重量配分は50:50となっています。
SUVのX3やX5も前後タイヤの重量配分は50:50を意識した設計となっています。
雪道に強い車といえば、4WD、FF、FRの順で語られるイメージが強いでしょう。これは、旧世代のFRが後輪への重量配分が軽いために空転してしまった結果です。前後バランス50:50のBMW車は、後輪へのタイヤ過重もかかりますので、従来のFRが弱いとされた雪道にも強いとされます。
FF車は、急な坂道において前輪への荷重が軽くなり、空転する場合もありますので、フロントヘビーなFF車は、車体安定に寄与した設計ですが、雪道においては弱点もあります。
下記は2010年当時のFR車の重量配分を記載したものです。
FF車のフロントヘビーな傾向は当然として、国産FR車のバランスもフロントヘビーな傾向だったと言えます。
雪道でのスタック対応はJAF
2020年12月の日本海側を中心とした大雪により、雪で立往生しているニュースは記憶にあると思います。自動車保険のロードサービスでは、雪道上でのスタックやタイヤチェーンの取付け・取外しは対応していません。
その点、JAFでは24時間対応している「雪道でのスタック対応」や「タイヤチェーンの取付け・取外し」を実施している点がメリットです。
自動車保険のロードサービスとの違い
一般社団法人 日本自動車連盟(JAF)
自動車保険のロードサービスでは、故障車両のレッカー手配は対応していますが、降雪時のスタックやタイヤチェーンの取付などの手厚いサービスは実施していません。全国24時間ロードサービスのJAFに加入すれば、万全の備えです。