「ブレーキが固くて踏めない」、「ブレーキが奥まで踏めない」、「エンジンがかからない」事態に焦ってしまった経験はないでしょうか?
そのような不具合の原因と対処方法について解説します。
ブレーキが固く(硬く)踏めない症状とは
- 土日しか車を利用しない。
- 前日、車を利用したときはブレーキが固くなかったが、翌日には必ずブレーキが固くなってしまっている。
- 停車中にブレーキペダルに足を置いて、何回か踏んでいたら、ブレーキが固くなって驚いた。
- ブレーキが固くなった理由がわからず、ブレーキが壊れてしまったのか?と焦った。
- ブレーキを踏まないとエンジンを始動させることが出来ない仕組みと理解しており、エンジンが始動できないと焦った。
- ブレーキを空踏みした記憶は無いが、ブレーキが固くなっていた。
愛車の症状は、どのようなケースなのかを把握していただき、対処方法に進みます。
シフトレバーが「P」レンジに入っていない
「P」レンジに入っていないケースも無いとは言い切れませんので、念のため確認してください。もしくは、再操作で「P」レンジのランプ点灯を再確認してください。
- シフトレバーを再操作し、Pレンジへ入れ直す作業を実施
- ブレーキを踏み、エンジン始動の操作を実施
ブレーキの機能別の仕組みとは
今回のケースでは、足元の「ブレーキを踏む」という動作を行った結果、「固い」と感じたわけです。よって、対象は足元「フットブレーキ」の事を指します。
基本動作は、右足でブレーキペダルを踏み込むことにより、タイヤ・ホイール内に設置されているブレーキ機能が作動します。この操作により、車の車速をコントロールしたり、停止するだけでなく、AT車の場合は始動時の必須操作となります。
ディスクブレーキ
ホイールの隙間から、シルバーの鉄製円盤が見えるでしょうか?
これがディスクブレーキ装着車のポイントであり、ブレーキディスクをブレーキパッドで挟み込み、摩擦熱を利用して車速をコントロールするものです。
ブレーキディスクは、ブレーキディスクローターとも呼びます。
ブレーキディスクを挟み込む形状の物をブレーキキャリパーと呼びます。
キャリパーの中に、ブレーキパッドが入っており、パッドをディスクに押し付けることによる摩擦熱で車速の減速(コントロール)を行います。
ディスクブレーキの仕組み
ディスクブレーキは、車輪とともに回転するディスクローターを、ブレーキキャリパーに組み込まれたブレーキパッドで両側からはさみ、ブレーキパッドをローターに押しつけることによって制動する(減速・停止させる)ブレーキシステムです。
ディスクブレーキの特徴
- コストが高価
- 構造から放熱性が良く、連続的なブレーキングに強い
- 高速域からのブレーキングに強い
- 主に前輪に採用されるが、後輪にも装備した車が多い
電動パーキングブレーキ(EPB)
電動パーキングプレーキはEPB(Electric parking Brake )と呼びます。通常は油圧式ブレーキとして機能し駐車や非常停止時には電子制御ブレーキとして機能するものでディスクブレーキにパーキング機構を内蔵し、減速ギアなどを介してモータなどで作動させるものです。
足踏みブレーキによる油圧動作とは別に電動となり、ブレーキケーブルの確保が不要となります。
主に従来のパーキングブレーキを電動化したものです。
オートブレーキホールド機能など、高級車への標準装備化が進んでいます。(今回のブレーキが固い件とは別の話となります)
電動油圧ブレーキとは
アンチロック・ブレーキ・システム(ABS)/横滑り防止装置(ESC)ユニットと電動ブースター、およびマスターシリンダーを一体化し、さらにブレーキ・バイ・ワイヤーの機能を盛り込んだ新しい電動油圧ブレーキです。電動ブースターは、真空ブースターに代わるもので、ブレーキペダルを介して伝える制動力をエンジンの吸気マニホールドの負圧を使って増幅する真空ブースターと違い、モーターでピストンを駆動することによって昇圧し制動力を増幅する。マスターシリンダーは、ピストンとシリンダーによって力を油圧に変換する装置です。今後、エンジン搭載車から電動化が進むにつれて、電動油圧ブレーキ装着車が増えてくることでしょう。
ドラムブレーキ
普通車では少なくなりましたが、主に後輪にドラムブレーキが使われるケースが多いようです。
自転車後輪の左軸軸にある丸い形状のものがドラムブレーキにあたります。
スクーターの後輪など、ブレーキパワーよりもブレーキ性能よりもコストや軽量化を意図した採用が多いです。
ドラムブレーキの仕組み
ドラムブレーキは、車輪とともに回転するブレーキドラムの内側に、ブレーキライニング(摩擦材)を張ったブレーキシューを押しつけることによって制動する(減速・停止させる)ブレーキシステムです。
ドラムブレーキの特徴
- コストが安価
- 構造から放熱性が悪く、連続的なブレーキングに弱い
- 高速域からのブレーキングに弱い
- 主にブレーキングパワーを必要としない後輪に用いられるケースが多い
油圧を用いたブレーキ操作
自動車のディスクブレーキ、ドラムブレーキは基本的に動力伝達を「油圧の仕組み」を利用しています。
ブレーキペダルからブレーキシステムまでを油圧ホース内のブレーキフルード(ブレーキオイル)で満たされています。
- ブレーキペダルを踏み込む
- 踏んだ力で、油圧ピストンが押し圧力をかける
- ブレーキフルードに圧力がかかる
- ブレーキシステム側のブレーキキャリパーへ圧力がかかる
- キャリパー内の油圧ピストンが押され、ブレーキパッドでブレーキローターを締め付ける
- 摩擦熱で車速が減速される
ブレーキブースターの機能
自動車にはドライバーがブレーキを踏む力を軽減できるように「ブレーキブースター」という圧力補助機能があります。
ブレーキブースター とは、倍力装置とも呼ばれる自動車のブレーキを構成する部品の一つで、運転手のブレーキ操作力を低減する為の補助を行うシステムです。作動にエンジン吸入負圧を用いる物は、日本語では真空サーボやマスターバック、英語圏ではバキュームサーボ とも呼びます。
足の力には限界がありますので、ブレーキに高い圧力をかけるために「ブレーキブースター」の補助機能として動作します。
パワーステアリングと同様に、ドライバーの操作力を軽減させるだけでなく、女性ドライバーの負担や長距離運転時の疲労を軽減させる効果があります。(電動パワーステアリングと同様、将来的にブレーキブースターも電動化が進んでいます)
ブレーキが固い状況の振り返り
ブレーキの機能が理解出来たところで、あらためでブレーキが固い状況を振り返ってみます。
- 土日しか車を利用しない。
- 前日、車を利用したときはブレーキが固くなかったが、翌日には必ずブレーキが固くなってしまっている。
- 停車中にブレーキペダルに足を置いて、何回か踏んでいたら、ブレーキが固くなって驚いた。
- ブレーキが固くなった理由がわからず、ブレーキが壊れてしまったのか?と焦った。
- ブレーキを踏まないとエンジンを始動させることが出来ない仕組みと理解しており、エンジンが始動できないと焦った。
- ブレーキを空踏みした記憶は無いが、ブレーキが固くなっていた。
そこで、皆さんは「力一杯にブレーキを踏み、やっとエンジンを掛けた」という記憶があるのではないでしょうか?
その場の対処方法
- かなり強くブレーキを踏んで、やっとエンジンを掛けた
- ブレーキのせいで、エンジン始動に手こずってしまう
ブレーキに異常が無いか不安な状況ではないでしょうか?
ブレーキが固い原因と対策とは
長期間、乗らなかったなどのケースでは、ブレーキが固い場合
ブレーキブースターの機能不具合で、ブレーキ踏力に対して補助機能が働かず、ブレーキが固い(重い)という状況が発生する。
対応策
とりあえず、ブレーキを強く踏み込んでエンジンを掛けられる事を確認する。
他の方にブレーキランプが点灯しているか見てもらい、ランプ点灯まで強くブレーキペダルを踏み込み、エンジンを始動します。
エンジン始動前のみ、ブレーキが固く(硬い)場合は、ブレーキブースターを含む「ブレーキ異常の前兆」の可能性があります。
以前に比べて、明らかにエンジン始動前にブレーキが固くなったと判断された場合は、早めの点検をお勧めします。
常時、ブレーキが固い(重い)ケース
昔はブレーキの踏む力が軽かったが、エンジン始動前、始動後に関係なく、常時ブレーキが固くなったと判断される場合です。
ブレーキを踏もうとしてもペダルが固くて踏みきれなかったり、Dレンジでブレーキ踏んでいてもクリープで進んでしまう事象が該当のケースです。
このようなケースでは、完全にブレーキブースターに不具合が発生していると判断されます。
マスターバックの不具合
- マスターバックはエンジンからのバキュームエアで動作しています
- バキュームエアの確認でポンプ、配管の漏れを確認
- マスターバックの不具合(ブレーキブースター)
早めに整備工場やディーラーで点検を実施してください。
ブレーキ異常の早期点検
エンジン始動後、走行中もブレーキが固い場合は、高速走行時により強い力が必要となり、踏む力不足(ブレーキ不足)となりかねません。。
ブレーキ故障は、事故の原因ともなりますので、このような事象が見られた場合は、即車の使用を止めて点検をお願いします。
エンジン停止中のブレーキ踏みは避ける
ブレーキーブースターはエンジン始動後の力を利用し補助機能となります。
(一部電動ブーストもあります)
よって、エンジン停止後は、ブレーキブースターへの補助機能が働きません。
エンジン停止後のブレーキを踏むと、どうなるのか?
エンジンの力を利用した油圧が掛からないため、ブレーキを踏んだ際に、ブレーキブースター内の油圧が掛からず、空気に満たされてしまいます。
- エンジン停止後は、ブレーキブースターも停止
- ブレーキを踏むとブレーキブースターが補助機能として働かず油圧がかからない
- 代わりにブレーキ系統が空気で満たされる
結果、ブレーキブースターが稼働していれば、軽微な力で済む所を、空気が満たされてしまうため、通常よりも大きな力でブレーキを踏み込む必要が出てきます。
エンジン停止時は、ブレーキをむやみに踏むことは避けましょう。
なお、ブレーキブースターに異常が無ければ、エンジン始動後は、ブレーキの固さは正常に戻ります。
ブレーキブースターの修理費用とは
ブレーキブースターが故障し、ブレーキが固くなってしまった場合の修理費用の解説です。
ブレーキブースター本体は、ネット通販でも購入可能です。
DIY派の方は交換可能ですが、重要な保安部品でもありますので、整備経験の無い方以外は推奨しません。
ブースター本体自体は5千円~1万円、外車でも数万程度です。
ブレーキブースターを交換時、ブレーキフルードも同時交換を行う事になります。
ブレーキフルードの部品が5千円~となっています。
ブレーキは重要な保安部品です。整備工場やディーラーなどでの対応をお勧めします。
なお、部品と交換工賃込で5万~が必要です。
新車・中古車保障で修理
通常のブレーキブースター(マスターバック)の修理交換には数万単位の出費が必要です。
ただし、重要な保安部品ですから、保証範囲内により対応される部品になります。
少なくとも新車3年保証には付属している保証内容ですので、ディーラーに確認を行いましょう。
早期にブレーキ不具合が発覚した場合は、定期点検を待たずに点検を相談しましょう。
まとめ「ブレーキが固く(硬く)踏めない」
ブレーキが固い原因は、ブレーキブースター(マスターバック)の機能に伴う事象という事が、ご理解頂けましたでしょうか。
- 始動時に固いと感じた場合は、焦らずに力強く踏み込んでエンジンを始動します。
- エンジン停止後はブレーキをむやみに踏まない
- 走行中も固いと感じた場合は、ブレーキの異常も考えられます。
この3点のまとめになります。
ブレーキは車を安全に走行させるための一番重要な装置です。
走行中のブレーキ異常は、自分の車だけでなく、相手にも損害をあたえてしまう結果となります。
ブレーキの異常を検知したら、早めの点検を推奨します。