「BMW整備士がBMWに乗りたがらない」という話は、本当でしょうか?
記事を良く読むと整備対象車が10年以上前であるなど、昔の話のようです。BMWとして最新の整備士を取り巻く状況を解説します。
BMW整備士の認定制度
整備士は「テクニシャン」と呼ばれる
BMWの整備士は、BMW社内において「テクニシャン」と呼ばれる呼称となっています。
これは、ドイツ本国において「非顧客対応スタッフ」という意図が背景になっています。
BMW社内における5段階の認定制度
整備士の入門となるジュニアテクニシャンを経て、最終的にマイスターとなります。
技術職として、上位資格へのランクアップにより、待遇面も保証されています。
MEISTER:マイスター
新旧のあらゆる車種に精通し、どんなトラブルにも対応できる
MASTER TECHNICIAN:マスター・テクニシャン
現行のあらゆる車種の全機能を理解し、問診を含めた診断プロセスを遂行できる
SENIOR TECHNICIAN:シニア・テクニシャン
現行のあらゆる車種の点検・整備/修理作業が一人でできる
TECHNICIAN:テクニシャン
BMW/ MINIに標準搭載されている機械系や電気系の作動方法・構造を理解し、故障診断や修理作業ができる
JUNIOR TECHNICIAN:ジュニア・テクニシャン
ワークショップ・スーパーバイザー(工場長)のサポートの下で定期点検や通常点検ができる
BMWは整備しやすい環境が整っている
整備に専念できる
ユーザー顧客への接客や説明応対は別のスタッフが対応するため、整備に専念できる環境が整っています。国産車ディーラーのように兼業スタイルではありません。
冷暖房完備の環境
国内ディーラーや大手カー用品店では、オープンな整備スペースで作業を行っているケースを見かけます。
厳しい温度変化や風や虫の影響を受け、整備に集中出来ない事が考えれますが、BMWの整備スペースは冷暖房完備の環境下で整備が行えます。
均一化された整備マニュアル
BMWは、外車であるため国産車に比べて整備しずらいイメージを持たれている方も多いと思います。テクニシャンの資格制度により、段階的に技術力が向上するとともに、整備マニュアルも用意されています。コンピュータ診断機による、不具合箇所の判定やエラー対応のデータベースが共有化され、早期の診断と正確な整備が可能となっています。
世界中のBMW車の日々のメンテナンスを行い、品質を支えているのは、正規ディーラーのテクニシャンなのです。
BMW診断機は純正に限る
BMWやBMWミニの車両内に埋め込まれた各種センサー、コンピュータ(ECU)の状況を読み取り、診断を実施するのが、純正診断機(ISTA)です。
2010年代までのE型は、従来までのDIS(ディステスター)診断を実施していましたが、最新の機器(ISTA)により、F型に加えて、最新G/Uシリーズにも対応しています。
一般の整備工場では、海外のソフトウエアをインストールした汎用機も存在します。これらは、エラーのチェックやリセット、クリアなどの対応は一定可能ですが、最新のプログラムまではカバーできておらず、それだけでは正確な診断が実施できないケースも出てきます。
その点では、世界中のデータベースからの障害事例と診断結果を照らし合わせ、最新の診断が可能となる純正診断機に軍配が上がります。
ネットの噂は本当か
BMWの整備士は乗りたがらない、乗らないという噂の真相を解説します。
BMWは、他の輸入車より壊れやすいのか
認定中古車の販売や整備の仕組みを整え、日本で一番最初に全国展開したのはBMWです。
新車保証やサービスフリーウェイ(メンテナンス保証)サービスを手厚く展開したのもBMWです。
目が肥えた日本製高級車ユーザーからBMWに乗り換えを促進するためには、右ハンドル市場や品質に細かい日本のユーザー向けの品質改善を行う必要がありました。当然、壊れにくさや維持費の低さも重要なポイントです。
長年の取り組みにより、30年前のE型から電装系も含めた品質向上が進み、F型やG型から不具合発生率は減少しています。
ネット上、昔の意見が検索上位に掲載
古い投稿記事が目立ち、その時点では、さらに古い中古車整備の話になってしまいます。当時のクルマとは品質も整備のスタイルも異なります。もはや、中古車市場でも現存車両は少なくなっているでしょう。
やはり、当時の整備士意見は参考にならず、近年の意見を参考とすべきです。
近年の品質評価の結果
市場調査会社による北米市場でのデータ(これも正しい評価とは言い難いかもしれません)です。
ユーザー評価が悪く、不具合も高ければ、整備士泣かせ、販売店側もクレーム対処を強いられ、改善の見込みが無ければ順位は下って行くものです。(北米でVWのシェアが低いのも納得の結果でしょうか)
BMWに乗らない理由とは
整備士が語る内容とは
- 維持費が大変(整備士収入と車両価格、維持費が釣り合わない)
- 軽く100万超えの見積もりはザラ(上級7シリーズ以上の多走行モデル)
- E型ではオイル漏れが酷かった(20年以上前の昔話。今のF型/G型は改善)
- 町工場でメンテした手抜き整備で手に負えず、ディーラーに持ち込まれた車の高額修理
ネット上におけるBMW整備士(過去形も)が、BMW車を避ける理由を整理してみました。旧車や上級グレード、問題あり車両を挙げているようで、意見の内容が現在基準に達しておらず、対象車種にも偏りがあります。
デメリットを熟知した回避方法や選び方がある
ウィークポイントを熟知した中古車やモデルの選び方があります。
全国どこでもBMWを普通に見かけるようになった現在、過去の昔話を適用するのは無理があるでしょう。
2020年基準としては
新車購入から間もない低走行、高年式モデルに維持費は掛かりません。これが、街中やサービスエリアでこれだけ他の輸入車やBMWを頻繁に見かける理由の一つです。
勿論、国産車に比べれば、部品を輸入に頼る分、割高になる部分は、輸入車オーナーとしても必要経費でしょう。
BMW整備士はBMWに乗らないのか・まとめ
社員の割引購入制度
BMWのディーラーに務めていれば、BMWが社割で購入できる特典があります。
セールスや整備士でも実際に愛車・通勤車として利用されている方も見かけます。
ネット上の記事では、古い10年以上も前の車種のオイル漏れが書かれていました。
また、本音としてBMWの良い点や維持できれば乗りたいとも書かれていました。
整備士の本音として
新車購入後3年間は、新車保証が適用されますが、期間経過後は定期部品交換など、コンディションを維持するための費用が発生します。その点では、高級車を所有し、維持するという点では相応の収入が必要となるのでしょう。
自身の整備士技術を生かせるメリットはありますが、部品交換などの維持費については相応の費用が発生する点がリスクと考えられているようです。
自動車整備士の年収
2020年データでは、ディーラーで働く自動車整備士の給料平均年収480万5000円。サラリーマン全体の給料平均年収457万6000円より高い金額にまでアップしています。一方、民間の整備工場で働く自動車整備士の給料平均年収370万3000円です。
欧州輸入高級車を維持するには、やや厳しい収入水準であることも事実です。
結果、数年を経過した中古車というのが現実的です。ただし、整備士としての環境も整っていることから、リスクの高い車を購入している可能性もあります。これらが、ネガティブ発言に繋がっているとも考えられるでしょう。
実態として
最近のBMWは2010年以前の形式に比べて、故障率が激減し信頼性も向上しています。
日本国内の販売台数や流通量も増えており、3年、5年落ちの中古車が200万円台で購入できる状況です。BMW中古車の程度を見極められる整備士として、下取り車両を安価に購入し、場合によってはDIYで整備・維持できるのが整備士である特典にもなるのです。
ネットの情報は誤りであり「BMWの整備士もBMWに乗る」という結論となります。