BMW 3.0CSLの歴史。現在の6シリーズの血統とも言える伝説のCSL(クーペスポーツライト)について解説します。
標準モデルの概要
3.0CSL登場に至る背景
モデル形式はE9型(1968年~1978年)の2ドアクーペのボディ形状です。
基本的なボディデザインや設計思想は、BMW1500がベースとなります。
この4ドア・モデルを2ドアクーペとした2000C/CSを流用したものです。クーペ化は1500系のデザイナーだった、ベルトーネのチーフデザイナー「マルチェロ・ガンディーニ」によるものです。1967年に登場していたセダン版の2500/2800同様の丸型4灯式に変更されています。
初代は、1968年に2800CSが登場しました。モデルサイクルは非常に長いです。
エンジンは、OHC直列6気筒エンジンの排気量2800ccです。現在の6シリーズ、8シリーズクーペのベースモデル(ルーツ)とも言えるでしょう。
FRで駆動し、美しいクーペと呼ばれる(E24型)6シリーズの先代モデルにあたります。
3年後には排気量をスケールアップし、直列6気筒エンジンを排気量3003ccとした「3.0CS」が登場します。
ボディサイズ (BMW 3.0CSL)
- 全長:4630mm
- 全幅:1730mm
- 全高:1370mm
- ホイールベース:2625mm
3.0CSLの概要
当時のツーリングカー選手権(1971年から1975年)や耐久レースなどのホモロゲーション(レース出場資格)を獲得するため、「3.0CS」をベース車両とした「3.0CSL」が登場します。CSLの生産台数は1265台となり、ホモロゲモデルとしても台数が多く、当時も人気が高かったようです。
ボディの軽量化を意味するライト(ドイツ語:Leicht)の頭文字を加えたCS「L」がネーミングになっています。アルミ製のボンネットやトランクリッド、ドアを採用し、約215キロの軽量化を図ったスペックとなっています。
登場後は、この直列6気筒エンジンが耐久レースシーンを席捲します。
1972年に開催のスパ・フランコルシャン24時間耐久レースでは優勝を飾っています。
BMW E9型の歴史
1961年登場の「ノイエクラッセ」と呼ばれるBMW1500の登場後、1.5〜2リッターのセダンは、当時としては非常に高い基本性能を持つクルマで、大変なヒット作となりました。このヒットによりBMW社業績は回復し、上級車モデルのE9登場のベースとなっています。
2800CSが登場:1968
CS(2ドアクーペモデル)の2000CSは、2リッターの直4SOHCエンジンを搭載しています。この2000CSをベースとし、プラットフォームに新開発のM30型直列6気筒エンジン(2788cc)を搭載(4MT/3AT)
3.0CSへツインキャブ仕様:1971
排気量この3リッターへ排気量アップしたM30型直列6気筒エンジン(2986cc)を搭載へ
- ボア×ストローク:89.0×80.0mmの2,985ccエンジンは、30度傾けて搭載
- 出力は180hp/6,000rpm、26.0kg-m/3,700rpmを発生
- tCS:キャブレター2基(35/40INATのゼニス・ストロンバーグ)
- 最高速:4速M/T 213km/hを、3速A/T 209km/h
3.0CSi インジェクション仕様:1971
排気量この3リッターへ排気量アップしたM30型直列6気筒エンジン(2986cc)を搭載へ
- 電子制御式のボッシュ製Dジェトロニックの燃料噴射装置(インジェクション)を採用
- エンジン圧縮比を9.5:1
- 最高出力210hp/6,000rpm、27.2kg-m/3,500rpm
- 4速M/T
- 5速M/T追加:3.764/2.020/1.424/1.252/1.000
- 最高速:220km/h
3.0CSL(軽量化モデル)初代登場:1972
ヨーロッパツーリングカー選手権(ETCC)レース用の台数確保としてのホモロゲーション取得のため、3.0 CSL(クーペスポーツライトの略)が登場。
- ドア:スチールからアルミ製へ変更して軽量化
- リアウインドウ:ガラスからアクリル製へ変更して軽量化
- パワーウィンドウ廃止
- CSiに比べて、1,400kgから200kgの軽量化を達成し、1,200kgの重量となっています。
- ドッグレッグのシフトパターン:ゲトラグ社製265型5速トランスミッション
モデル名の「L」は、ドイツ語で、Leicht=軽量の意味を示している。
1200kg(-200kg軽量化)、3003cc公道仕様206馬力、レース用300馬力以上
アルピナ社の協力体制
- CSLの開発にはアルピナ社による2800CSの高性能版の経験が生かされています。
- 1971年3月:CSL仕様が完成(当初目標130kg)
- 開発に着手:エンジニアたちは20項目に及ぶ変更点を取り入れ、ベースモデルの総重量から215kg削減
- 1971年5月6日:BMW 3.0 CSLの車両重量は目標値を超える215kgの軽量化を果たし、車両重量1,165kgを達成。0-100km加速:7.1秒、最高速度:220km/hの性能を発揮
3.0CSL(軽量化モデル)2代目登場:1973
ロングストローク化による排気量アップ(3153cc/206ps)。
フロント・リアに大型スポイラー、オーバーフェンダーを装備し、その奇抜なスタイリングから「バットモービル」と呼ばれました。
ヨーロッパツーリングカー選手権(ETCC)のタイトル、ルマン24時間耐久レースでのクラス優勝を果たします。2.5CS(874台)の廉価版モデルも登場
5年連続チャンピョン取得:1975
1974年フォード・カプリRS2600により優勝を逃すものの、1975年から5年連続チャンピオンを取得します。1975年時、レース専用の直列6気筒エンジンM49型は、430馬力を発生するまでにチューニングが施されていました。
グループ5でも優勝:1976
FIAグループ5参戦用3.5CSLにより、3度の優勝を果たしています。
後継モデルにバトンタッチ
CSLの後継モデルとなる、6シリーズ(E24型)やM1(E26型)へ、受け継がれていきます。
5シリーズの初のM5エンジン(M88型)のベースにもなる。
BMW 3.0CSLのボディスペック(諸元)
- 全長:4630mm
- 全幅:1730mm
- 全高:1370mm
- ホイールベース:2625mm
- トレッドF:1446mm
- トレッドR:1402mm
- 最高出力:200ps/5500rpm(第二世代以降)
- 最大トルク:27.7kg/4300rpm
- 車両重量:1280kg
初代(1971年)
- OHC直列6気筒エンジン
- 排気量:2985cc
- 最高出力:180ps
- 最大トルク:26kg/m
- 吸気系:ツインキャブレター
- 最高速度は215km/hを達成
第二世代(1972年)
- OHC直列6気筒エンジン
- 排気量:3003cc(レース出場のベース車両。規定向けの排気量アップ)
- 最高出力:200ps/5600rpm
- 最大トルク:27.7kgm/4200rpm
- 吸気系:ボッシュ社製のDインジェクター仕様。
- 最高速度は220km/hを達成(エアロ装着)
BMW M社の設立
BMW Motorsport GmbHがモータースポーツ部門として設立。BMW 3.0 CSLの開発に参画。
第三世代(1973年)
- OHC直列6気筒エンジン
- 排気量:3153cc
- 最高出力:206ps/5600rpm
- 最大トルク:29.2kgm/4200rpm
- 吸気系:ボッシュ社製のDインジェクター仕様。
- 駆動系:リミテッドスリップデフ(LSD)を追加
- 最高速度は220km/hを達成(エアロ改良)
バットモービル
「バットモービル」と呼ばれる、斬新なエアロ・パーツで武装したモデルが登場。
CSL関連情報
マルイの BMW 3.5CSL プラモデルのベース車両
当時、レースシーンでは、ポルシェ935ターボと熾烈なバトルを繰り広げていました。
3.0CSLの市販車用3リッターエンジンは、レース用に3.5リッターに排気用アップ。
グループ2のレース仕様は、1973年に3.3リッター、1974年以降は3.5リッターのエンジンを搭載しています。ロニー・ピーターソンがドライブするマシンです。
レースでは、前期3.0CSLと後期3.5CSLの名称で出場しているようです。
実際の市販モデルより、3.0CSLといえば、このBMWワークスカラーのカラーリングのイメージ強いと思います。このモデルを購入して作成した方も多いことでしょう。
サーキットの狼で登場の1/20サイズ・プラモデル
童友社の発売で、サイズは1/20です。他にフジミ模型の1/24シリーズも「サーキットの狼」シリーズとして販売されていました。
写真は、京極さくらのドライブする3.0CSLターボ
漫画の中では・・・隼人ピーターソンは、流石島レースにレース仕様で登場し、最後は火山地帯に突っ込みクラッシュ、炎上しまいます。
京極さくらが、日光レースでは3.0CSLターボ仕様で登場。ルマン・イン・ジャパンではのパワー炸裂。Aライ模擬レースでマセラティカムシンと大クラッシュのストーリー。
Masakuni Hosobuchi and his BMW M collection
Masakuni Hosobuchiが所有するBMW 3.0CSLとBMW M1の素晴らしいBMW M車コレクション。
E9型3.0CSL以降の変遷・歴史
現代に蘇るBMW 3.0CSLオマージュRとは
正式名称は「BMW 3.0CSLオマージュR」です。あくまでショー出品用のコンセプトモデルになります。そのモデルは、2015年のクラシックカーイベント「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラデステ」に登場しました。イベント自体は、イタリアのコモ湖畔で毎年開催されます。
1971年~1975年に生産された「BMW 3.0CSL」のイメージをベースとして現代に蘇った衝撃のデザイン。1970年代にヨーロッパツーリングカー選手権チャンピオンシップ(ETC)のレースモデルとして3.0CSLはデビューしました。
CSLのCSはクーペ・スポーツ。Lはライトの訳です。(ドイツ語でLeicht)
軽量なクーペスポーツモデルが直訳になります。「オマージュR」は、1975年にIMSAレースに参戦の「BMW 3.0 CSL IMSA」のカラーリングがベース。
- カーボンロールケージ
- AR(拡張現実)ディスプレイヘルメットバイザーを採用
- カーボン製素材により軽量化
- 直列6気筒エンジン直噴ツインパワーターボ
- ハイブリッドシステム「eBoost」を採用